地方からの新たな知の創造に向けて
国際秩序の根幹を揺るがす軍事侵攻や長期にわたる感染症危機など、予想しがたい激変のなかで世界が模索を続けています。これまでの経験が通用しない複雑多岐な動きの下で、わが国では、想定をはるかに越える厳しい人口減少が続いています。そこで、次世代に向けて地域社会をどのように構築していけばいいのかが問われています。大変な難題ですが、その解決に向けては、中央の政策をただ受け身で画一的に受入れるだけでは限界があります。地方の持つ多様で柔軟な力を引き出しながら、地域自らで解決していく知的な力を醸成し、創造的な発信に挑戦していくことが大切です。
その挑戦を形にしていくために、地域創造研究センター(以下「センター」)は設立されました。2021年に恵庭市制施行50周年を記念して北海道文教大学で開催されたフォーラムを契機に、北海道文教大学と恵庭市は、地域社会が抱える課題の解決に向けた、新たな共生、連携の仕組みについて検討を進めてきました。そこで、地方の高等教育機関の新たな役割として、地域のアカデミズムと地方自治体の政策力を結びつけた新しいプラットフォームとして誕生したのがセンターです。
センターの目的は、地域の課題解決に向けた政策研究を展開し、地域の活性化に寄与するとともに、先駆的な地域政策を地方から提起していくことです。もちろん大変重い命題ですが、ただ成果を追い求めるだけではなく、内外の研究者や行政実務者、民間人、市民、学生らとの議論、情報交換、交流など幅広い地域研究活動のプロセスを通じて地域人材が育っていくことも大切な目的だと考えています。それが、地域の力で地域の課題を解決していく、新たな知の拠点としてのセンターの重要な使命です。
センターは、政策テーマごとに共同研究プロジェクトを組織して活動しますが、内外の専門研究者とともに幅広く地域の行政、民間、市民が参加するオープンなプラットフォームを目指しています。センターの活動理念に関心を持ち、一緒に挑戦したいという意欲をお持ちの方の参加を心より期待しています。
※ センターの今後の活動について関心のある方は、小磯センター長がセンター開設記念フォーラム(2023年8月5日開催)で報告した「地域創造研究センターの挑戦」をご覧ください。
略歴
小磯 修二
【現在の活動】
(一社)地域研究工房 代表理事
北海道文教大学特任教授 地域創造研究センター長
北海道大学公共政策大学院客員教授
北海道ガス株式会社取締役(社外)
【主な経歴】
- 1972年
- 京都大学法学部卒業
- 1978年
- 国土庁計画・調整局計画課専門調査官
- 1981年
- 北海道開発庁企画室開発専門官
- 1983年
- 在外研究員(オーストラリア連邦政府第1次産業省フェロー)
- 1985年
- 国務大臣秘書官(第1次竹下登内閣)
- 1989年
- 北海道開発局国際室長
- 1992年
- 北海道開発庁企画調整官
- 1999年
- 釧路公立大学教授、地域経済研究センター長
- 2008年
- 釧路公立大学学長
- 2012年
- 北海道大学公共政策大学院特任教授
- 2020年
- (公社)北海道観光振興機構会長
【専門 地域開発政策、地域経済】
実践的な地域課題解決を目指す研究スタイルで、数多くの地域研究プロジェクトを組織。中央アジア諸国はじめ、開発途上国での地域開発分野での国際協力活動にも長く従事。
【主な公職】
国土審議会専門委員、北海道総合開発委員会委員、道州制推進検討会議委員、JICAイシククリ総合開発計画監理委員長、産消協働推進道民会議座長、北海道庁顧問、市町村合併推進審議会会長、北海道観光審議会会長、北海道社会資本整備方針検討委員会委員長、エネルギー問題懇談会座長、北海道バックアップ拠点構想有識者会議座長、北海道強靱化計画検討有識者会議座長、北海道の人口減少問題に関する検討会議座長、北海道創生協議会委員、北海道史編さん委員会委員長、特定複合観光施設(IR)に関する有識者懇談会座長(2018)他
【主な著書】
「戦後北海道開発の軌跡」(共著、北海道開発協会)、「地域自立の産業政策」(イマジン出版)、「地方が輝くために」(柏艪舎)、「コモンズ 地域の創生と創造」(共著、北大出版会)「地域と共に生きる建設業Ⅰ、Ⅱ」(中西出版)、「地方創生を超えて」(共著、岩波書店)、「地方の論理」(岩波新書)他。
【主な受賞歴】
日刊工業新聞「日本モノづくり大賞・特別賞」(2009年)、国土交通大臣賞(地域公共交通活性化)(2011年)、JICA理事長賞(2020年度)、河川功労賞(2021年度)